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やさしい税金・みじかな税金 アラカルト1~10

やさしい税金 みじかな税金 アラカルト10

法人税 欠損金の繰り戻し還付

政府は経済不況のてこ入れに必死で、中小企業の優遇税制にもあの手この手で国民の関心を引こうとしている。12月12日、2009年度税制改正大綱が発表されたが、この中から「欠損金の繰り戻し還付」(法人税)を取り上げてみよう。

仕組みは特別難しいものではなく、欠損金が出た場合、前年の利益にさかのぼって充当してやろう、ということである。もともとあったこの制度は、平成4年度から適用停止となり、以後2年ごとに停止期間を延長してきたものである。停止の解除は、当然とはいえ、中小企業には利用効果の高いものである。

還付される税金は次の通りである。
前期に収めた税金 × 当期欠損金/前期利益金 = 還付を受ける税金

前期に利益を計上していない企業には何のご利益もないが、活用範囲は広いと考えてよいだろう。そこで、制度を活用するための心得をー。

一旦納めた税金を取り戻そう、というものだけに、やはり厳格性が保たれなければならない。ということは、申告内容が正しいか、の問いかけが一般より厳しいと考えておく方がよい。当然、税務調査も通常より頻度が高くなると思えておくほうがよいだろう。何も欠損金を計上した年の処理のみが問われるのではなく、当然に利益を確保している年度の内容が問われるのはいうまでもない。

ただ、調査があるからといってなにもビビル必要はない。ここはやはり日ごろの姿勢がものをいうのである。どんどん活用されることをお勧めする。
なお、この制度は平成21年2月1日以後に終了する事業年度から適用される。

やさしい税金 みじかな税金 アラカルト9

「リース取引にかかる消費税の取扱い」について

平成20年4月1日以降に契約した「所有権移転外ファイナンスリース」(以下単に「リース」という)の消費税の取扱いは、そのリース取引の契約日における事業年度において、消費税の課税仕入れとすることとされた。(既報)

しかし、「中小企業の会計に関する指針」において、少額または短期のリース取引について重要性が乏しい場合には、例外的に賃貸借処理(つまりリース決済日処理)が認められることになっている。
また、法人税の処理は、支払いリースに合わせた「リース期間償却法」が定められている。
こういった状況の中、国税庁は「移転外リース取引につき、事業者(賃借人)が賃貸借処理をしている場合で、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れ等として消費税の申告をしているときは、これによって差し支えない」との見解を示した。

これを受けて、税理士会では、突っ込んで国税庁と調整し、次の5項目のQ&Aを発表した。紹介しておこう。

(1)
Q リース取引につき、「支払いリース料」として、その都度、決済日に経費にしている場合には、その決済日における期間の課税仕入れとしても差し支えがないか。
A 認められる。

(2)
Q 同じ事業年度に複数のリース契約がある場合、一方を契約日における総額を課税仕入れとし、他方をリース料支払日ごとの課税仕入れにすることは認められるか。
A 認められる。

(3)
Q 「支払いリース料」の処理ごとに課税仕入れとしてきたが、次年度以降において、残り部分を一括して課税仕入れにすることは認められるか。
A 認められない。

(4)
Q 「支払いリース料」として支払い時の課税処理を行ったが、一括して契約日の課税処理とすることに変更して、更正請求をすることは認められるか。
認められない。

(5)
Q リース締結を行った事業年度が、簡易課税適用年度または免税事業者であった者が、次年度以降に原則課税事業者になった場合、「支払いリース料」の決済ごとにおいて、課税仕入れとすることは認められるか。
A 認められる。

平成20年11月14日 日本税理士会連合会通達より

(附記)
詳細は日本税理士会連合会 Webサイトをどうぞ!

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中小企業経営承継円滑化法

正式には「中小企業における経営の円滑化に関する法律」といい、平成20年10月1日に施行された。(ただし、本稿で解説する民法特例法については21年3月1日施行)使い勝手はそんなにいいと思われないが、周知しておくことは重要だと考えます。本稿は概要のみ記しますので、関心のある方はぜひ精査いただき、顧問税理士等にご相談されることをお勧めする。

民法規定の遺留分について
まず、今回の改正を知るためには、民法の遺留分について十分な理解がないとチンプンカンプンになるので、遺留分について簡単に記しておこう。
遺留分とは、相続時における、配偶者や子どもに対する最低限の資産承継の権利の保障。原則として法定相続分の半分である。

具体的に記すと、例えば、配偶者と子2人のとき、民法では、配偶者2分の1、子はそれぞれ「2分の1 × 1/2」となる。このようなとき、遺言などでゼロとされた子がある場合、その子は民法規定の1/2を遺留分として請求することが出来る権利を有するというわけである。
この制度が、著しく中小企業の承継を阻害しているという。

つまり、中小企業者の多くの資産は、自社株や事業用資産であるケースが多く、相続による分割はきわめて難しい。「遺留分の制約」がこれをさらに難しくし、後継者に経営権を集中させることが困難になっている。
その結果、事業の廃止に結びつき、雇用機会の喪失、地域経済の衰退などを招いている要因になっている、といわれる。これを打開しようというのが今回の改正趣旨である。

遺留分算定基礎財産からの除外
今回の制定は「遺留分に関する民法の特例」である。推定される相続人の合意によって

(1) 被相続人から後継者に贈与された自社株や一定の財産について、その全部または一部を遺留分算定の基礎財産から除外できる(除外規定)。
(2) 生前贈与株の全部または一部を贈与時の評価額であらかじめ固定しておくことができる(固定合意)。
が、できることとした。

これによって、遺留分減殺請求を未然に防ぐことができるのである。

具体的な「合意」要件
前記の合意は、次の要件を満たすことが必要。

(1) 推定相続人全員の合意
(2) 書面によること
(3) 特例合意の対象となる株式を除くと、後継者の議決権比率が過半数に達しないこと

その他の手続き
推定相続人の合意後、1ヵ月以内に「経済産業大臣の確認」および「家庭裁判所の許可」(いずれも後継者の単独申請)を得ておかなければならない。

実務上の課題
推定相続人全員の合意が必要であることです。しかし、この時点では、現職経営者がご健在なわけであるから、そういった意味からは合意の可能性が広がるとみてもよいでしょう。
ただし、相続時精算課税のしくみを理解して対処しなければなりません。

その他の措置
かなり大胆な「金融支援措置」が併せて施行されており、また「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予」が創設される予定。関心のある方は個別に相談に応じます。

やさしい税金 みじかな税金 アラカルト7

教育訓練費の税額控除=法人税

今の時代、社員教育の重要性、技術訓練はもとより、知的教育、コニュニケーション等々その重要性は計り知れません。
これに呼応して、といってよいでしょう。「教育訓練費」の税額控除が大きく改正されました。中小企業の多くに適用されると考えられますので、これについて述べておきましょう。

従来は「教育訓練費が増加した場合」に適用されていたのですが、平成20年4月1日から開始される事業年度から、「増加」の条件がなくなりました。従って、ほとんどの中小企業で適用できると考えられます。

I 適用対象
・中小企業等で青色申告法人
・平成20年4月1日から平成21年3月31日までの間に開始する事業年度
・教育訓練費割合が0.15%以上
   * 教育訓練費割合とは、支出した労務費のうちに、教育訓練費の占める割り合い
     教育訓練費 ÷ 労務費(給与等、法定福利費、教育訓練費)

II 教育訓練費とは?
・教育訓練費とは、使用人の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるための費用
   * 「使用人の職務」とあるとおり、役員ははずされます。

III 税額控除を受けるためには、次の内容を記した書類を確定申告書に添付することが条件です。
・教育訓練の実施日
・教育訓練の内容
・教育訓練等に参加した者の氏名
・費用を支払った日、金額、相手先
・その他参考事項

これを決算時に拾い出すのはなかなか大変です。従って、日ごろからその準備を心がけておきたいものです。
参考として、末尾に日ごろの整理に必要と考えられる表を添付しておきます。

IV 法人税から控除(減額)される税金
・次の(イ)(ロ)のいずれか少ない金額
(イ)・教育訓練費が0.25%以上である場合は   教育訓練費 × 12%
   ・  〃  が0.25%未満である場合は   
          教育訓練費 × {(教育訓練費割合 ー 0.15%) × 40 + 8%}
(ロ)その事業年度の所得にかかる法人税の20%

V いくら税額が低くなるか。具体的に数字をあてて2例をみてみましょう。

(1) 事例1 労務費総額6000万円 教育訓練費 12万円(月額1万円)法人税額10万円
(2)事例2   〃  6000万円   〃  120万円(〃10万円) 〃  100万円

【事例1 回答】
・教育訓練費割合 12万円 ÷ 6000万円 = 0.2%
・税額控除    12万円 × {(0.2% ー 0.15%) × 40+8%} = 1.2万円
・税額控除の限度額 10万円 × 20% = 2万円
・従って 法人税の減額される金額は1.2万円です。

【事例2 回答】
・教育訓練費割合 120万円 ÷ 6000万円 = 2%
・税額控除    120万円 × 12% = 14.4万円
・税額控除の限度額 100万円 × 20% = 20万円
・従って 法人税の減額される金額は14.4万円です。

VI 中小企業の皆さんへ!
このように、いずれの場合でも確実に税額が減額されます。日ごろからせっせと「教育訓練費」を書き出して、決算期に税理士に提示するように心がけましょう。

そのためにお役に立つと思われる表を掲げておきます。

やさしい税金 みじかな税金 アラカルト6

遺言によって土地等を法人に遺贈(死因贈与)することができますか?

Q 「贈与者甲さんと受贈者乙株式会社との間で土地を死因贈与しようと考えていますが、問題点があれば教えてください」
 このような質問を受け取りました。
 これについて、検討してみましょう。

 法律の上では、何の問題もなく死因贈与契約を結ぶ事は可能です。ところが、厄介な税法、「みなし譲渡」の規定があり、十分周知して対応しなくてはなりません。
具体的に、次の課税が生じます。

1 法人に対する課税
法人は受贈益、つまり、雑収入になるわけですから、時価をベースにした課税が生じます。ここでいう時価は、相続税でいうところの時価であり、路線価をいうわけではありません。あくまで、市場売買価格での時価ということになります。

 一方、遺贈をした被相続人に対しては、「みなし譲渡」として所得税が課せられます。もとより、被相続人はこの時点では亡くなっているわけですから、課税は相続人が引き継ぐ形で相続人が納めなければなりません。

そんなバカな、相続人としては何も貰っていないじゃないか、という恨み言が相続人から聞こえてきそうですが、税法の規定です。ということは、こういう契約はしてはいけない、ということになるのでしょう。

なお、遺贈だけではなく、法人への贈与も同じ取扱いになりますので、十分ご注意下さい。
では、これで終わりかというと、ここから進めるのが、究極の節税対策なのかもしれません。

真の節税対策

死因贈与の発効がどの時点で生じるかは、人の命にかかわることですから、推定したり、想像するのは、難しい上に、不謹慎かもしれません。そのことはさておいて、次の場合には、法人への死因贈与が成立つと考えていいのではないでしょうか。

 受贈する法人が、累積欠損を抱えており、雑収入(受贈益)を計上しても法人税がかからない。

 被相続人のみなし譲渡となっても、時価が購入価格より低いため、実際には所得税がかからない。

すなわち、1と2の条件がそろっている場合には、死因贈与は有効に活用できると考えてよいでしょう。

なお、法人に対する贈与で一定の条件に該当する場合は、税金を免除される場合があります。少し紹介しておきます。

国または地方公共団体への遺贈又は贈与、民法第34条に規定により設立された法人その他公益を目的とする事業を営む法人に贈与又は遺贈で、国税庁官の承認を受けたものについては、譲渡所得がなかったものとなす、という規定があります。

このように、特殊な場合もあるので、精査して対応して下さい。

やさしい税金 みじかな税金 アラカルト5

いわゆる「ふるさと納税」について

話題の「ふるさと納税」について記してみましょう。
「ふるさと」の定義が人によって異なるため、必ずしも出身地や過去の居住地に限定しないで、全ての都道府県、市町村(以下、市町村とします)に行うことができます。

自分の希望する市町村に税金を納めるというのではなく、その希望する市町村に「寄付」し、その寄付金額が翌年の市町村民税から「寄付金控除」として減額されます。これにより、実質「ふるさと納税」になるというわけです。
地方税は、現行、都道府県民税4%、市町村民税6%、計10%ですが、基本的にそのまま税額控除になります。

ただ、地方税の寄付金控除は、寄付金から5000円を超える額が税額控除となるため、5000円の差損?が生じます。また、寄付金控除の上限が税額の30%ですので、全額を「ふるさと納税」にというわけにはいきません。ご注意下さい。

なお、各市町村は、ぜひ我が町にふるさと納税を!とあの手この手で、積極的な勧誘に乗り出しています。なかには、インセンティブ(ご褒美?)まで準備している市町村も少なくありません。

参考までに、ちょっと紹介しておきましょう。

兵庫県川西市→市の特産品「イチジク」を検討中?
山形県→県産米の新品種「山形97号」(500g)
    庄内地方の郷土玩具「御所まり」
宝塚市→私立手塚治記念館の入館券
北九州市→観光カレンダー

やさしい税金 みじかな税金 アラカルト4

リース取引の税務

平成年20年4月1日以後に開始する事業年度から、リース取引の会計処理が改正されています。
また、新会計基準を踏まえて、リース税制が改正され、平成20年4月1日以降に締結するリース契約から適用されますのでご注意下さい。
最重要改正ですので、充分に周知願います。

なお、本稿は中小企業を対象にし、かつ、わが国のほとんどを占める「ノンキャンセラブル」(途中解約不能)と「フルペイアウト」(借り手がリース資産からもたらされる経済利益を享受する)を満たす、一般的な「ファイナンシャルリース」といわれるものにより解説します。詳細については、必ずお問い合わせいただくか、専門書等でご確認ください。

新リースの会計基準の概要

ファイナンスリースの分類
旧基準
新基準
所有権移転売買処理売買処理
所有権移転外原則;売買処理
例外;賃貸借処理
売買処理
                    

[解説] 売買処理と賃貸借処理

    原則は上記のとおりですが、[所有権移転外」にあっては、次のいずれかに該当すれば、
    売買処理ではなく、賃貸借処理でもよろしい。

    (1) 購入の場合、全額が費用処理できるほどの少額なリース
    (2) リース期間が1年以内のリース
    (3) 会社の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、1件300万円以下のリース

   売買処理時は、リース料のうちの支払利息を算定する必要がある、とされていますが、
   実際的には支払利息の区分けは困難、かつ、表記されないことがほとんどであり、区分け
   しないでも可ということでいいでしょう。

リース税制

ファイナンスリース
新リース税制
参考
所有権移転売買処理償却はリース期間定額法
所有権移転外原則;売買処理
例外;賃貸借で処理しても可
同上
リース料をそのまま損金処理

[解説1] 具体的な処理=売買処理

  具体的な処理=売買処理

  *リース期間を5年60回により説明しています。このようにリース期間のすべてに
   かかる消費税を締結時の年度において全額課税仕入れとして処理します。
  *減価償却は、リース期間定額法によります。従って、減価償却額は、支払いリース料と
   同額になります。

[解説2] 具体的な処理=賃貸借処理

  リース締結時   仕訳なし
  リース料支払日 (借方)支払いリース料 105 (貸方)現金預金 105
  決算時      仕訳なし
            ただし、個別注記表に記載しなければなりません。

  *この場合において、リース締結時の事業年度において、消費税の課税仕入れに300を
   加えることが重要。従って、105 については、課税仕入れに該当しないことと
   なります。

[解説3] 実務家からのアドバイス

  原則的には、「売買処理」となりますが、実務処理としては「賃貸借処理」の方が簡単な
  ようですので、どちらを選んだ方がよいでしょうか。
  過日、私的研修仲間に問いかけてみたところ、全員が「売買処理」を行うことで一致
  しました。
  では、なぜ「売買処理」の方がベターなのでしょうか。理由まで尋ねたわけではありません
  が、賃貸借だと会計処理と消費税処理が乖離して、いわゆる違和感を拭えないということ
  でしょう。
  当事務所も「売買処理」を採用することにいたしました。

貸し手の税務
  貸し手は、売買処理にて行うことが原則になります。
  ただし、税務処理は、リースによる売買処理と延払い条件付販売に該当することとし、
  延払い基準の方法を選択することができます。

十分注意して対応してください。

やさしい税金 みじかな税金アラカルト3

消費税の基礎知識

ようやく所得税確定申告の多忙期を終えることができました。今年もいろいろな相談事が持ち込まれましたが、なかなか理解していただけないのが、消費税の仕組みです。
この機会に、消費税の仕組みを取り上げてみました。

〈消費税の基本〉

まず、消費税は事業者(個人で事業を営む人と法人)に対し、いわゆる国内消費に課税されるものです。従って、輸出には課税されません。

〈非課税取引〉

消費税には非課税となるものがあります。土地の売買や賃貸借、有価証券の売買、預金・貸付金の利息など、消費になじまないものがそれです。また、政策的見地から、非課税とされるものに、健康保険などの医療費、学校教育に関する諸費用、居住用財産の賃貸借などがあります。
今回は、これらを細かく記すことを目的としていませんので、詳しくは記しませんが、土地の貸付については、課税されるものも出てきます。つまり、ガレージ業のような場合です。

〈課税はどの年から?〉

一般に知られているのは、課税売上1000万円未満なら免税である、同5000万円未満なら簡易課税が選択できる、という程度のようです。
でもこれでは、いかにも荒っぽすぎますので、すこし述べてみましょう。

・ハッキリ知識を身に付けていただくためには、まず、基準年度のことをしっかり知っていただく必要があります。

・「基準年度」…個人事業者の場合は、前々年度をいいます。
       …法人の場合は、基本的に同じ考え方で、2年前の事業年度をいいます。

・課税はどの年から?…基準年度の課税売上が1000万円以上の年度から課税です。
        例えば、個人事業者の場合だと、平成19年度が消費税の課税事業者であるか
        どうかは、平成17年度の課税売上が1000万円以上であるかどうかです。
        法人も基本的には同じ考え方ですが、新設法人の場合は、基準年度の課税
        売上を1年に換算して判定します。また、資本金1000万円以上だと
        課税業者と扱われます。

        ここでいう課税売上とは、企業会計にいう売上ではなく、売上はもとより、
         雑収入や、固定資産の売却なども含まれます。

〈消費税の税額はどのように計算するのか?〉

消費税の解説書を読まれると、常に消費税等となっており、かつ4%で説明されていますが、これは、4%が国税としての消費税、1%が地方消費税によるもので、この解説では単に消費税で表し、税率も5%で示します。

課税は
        (課税売上 ー 課税仕入)× 5% = 消費税
が原則です。
ここでいう、課税売上は会計でいうところの売上だけではなく、先に記したとおり、雑収入や固定資産の売却代金も含まれます。仕入れも同様で、諸経費の支払いや固定資産の購入代金も含まれます。

以上が原則課税といわれるもので、上記算式の「課税仕入」を業種によって概算(みなし仕入れ率)計上しようというのが、「簡易課税」と呼ばれるものです。
いずれ機会を見て、紹介していこうと思っていますが、消費税の本格的な知識になるとわれわれも閉口するくらいややこしく、解説書もゆうに分厚い電話帳1冊になります。
みなし仕入れ率を紹介しておきましょう。

        第1種 90% 卸売業
        第2種 80% 小売業
        第3種 70% 農業 林業 漁業 鉱業 建設業 製造業など
        第4種 60% 1?3 4種を除く
        第5種 50% 不動産業 運輸通信業 サービス業

具体例 最近の事例から2件を紹介してみましょう。

事例1 個人事業者
同業者に連れられて、Aさんがお越しになりました。パチンコの景品交換所の管理というちょっと変わった仕事です。平成19年1月1日、前任者から引き継いだということで、収入総額は4800万円です。経費のほとんどが人件費です。同行者に「消費税が大きくかかるぞ!140万円前後は覚悟しておけよ!」と脅されて?心配を抱えながらの来所です。
同行者の消費税は114万円です。同規模ですから、そういう計算になるのでしょう。
さて、結果はどうでしょうか?

事例2 法人
タクシー会社を設立されました。平成19年2月の設立で、資本金は800万円。11月末にようやく認可がおりて、12月から車が走り出しました。12月の水揚げは、400万円程度です。
1月に入って、順調に業績を伸ばし、月額1000万円クラスになり、まもなく1500万円に届きます。平成20年12月末の消費税が心配で頭を抱えられています。
さて、この場合はどうでしょうか?

事例1の解説

・もし、課税されるとすれば、どのくらいの税額になるのでしょう。
   (1)課税される消費税
       4800万円 × 100/105(消費税ヌキに換算)× 5% = 228万円
   (2)控除される消費税(仕入れ税額控除)
       ほとんどの経費が人件費で、いわゆる課税仕入れに該当するものはほとんど
       ありません。大目に見ても1000万円くらいでしょうか。
       1000万円 × 100/105 × 5% = 47万円
   (3)消費税額 (1)ー(2) = 181万円

これが考えられる消費税額です。ところが

・平成19年1月1日の開業ですから、基準年度(平成17.1.1?17.12.31)の売上はゼロです。従って、19年度は免税業者になり、消費税はかからないのです。
・平成20年度についても、まったく同じことがいえますので、やはり消費税はかかりません
これでおしまい。が、忘れてはならないことがあります。

・簡易課税を選択すればどうなるか、ということをチェックしてみる必要があります。
    4800万円 × 100/105 × 5% × 50%(この業種のみなし仕入れ率)
    = 114万円

原則課税181万円と簡易課税114万円 どちらが有利かを検討する余地はありません。簡易課税にすべきは論を待ちません。
大切なことは、簡易課税を選択するには、届出が必要で提出期限は、選択する事業年度の開始する日の前日まで。つまり20年12月31日までに必ず、「簡易課税選択届出書」を提出しておかなければならないのです。決算(申告)に取り組んでからの相談では、すでにタイムリミットを過ぎています。

消費税では、この種のトラブルが後を絶ちません。注意したいのですが、私共としても知った時点ではすでに手遅れになっているケースが実に多いのです。
余談ですが、法の改正が待たれます。

事例2の解説

・もちろん、基準年度はありません。資本金800万円ということから、課税事業者になることはありません。従って、平成20年期の税額はこの年の売上がどんなに大きくてもゼロ。
・平成21、12月期はどうでしょうか。基準年度の売上は400万円、2月の設立ですから、1年に換算します。
    400万円 × 12/11 = 436万円
となり、1000万円未満です。従って、21.12月期の消費税も免税事業者です。税額はゼロ。
もし、課税がされれば、400万円にもなるでしょうか。トンでもない違いです。おおいにこの間に稼いでください、とアドバイスしておきました。

なお、平成20年4月1日以降に開始する事業年度から、リース取引に対する消費税の取り扱いが大きく改定されました。次回に紹介したいと思っていますが、十分ご注意下さい。

やさしい税金・みじかな税金 アラカルト2

少額減価償却資産

決算期が近づき、大きな利益を上げている企業からよく質問されるケースに「いくらのものまでなら、経費になりますか」があります。今回はこの質問にお答えしましょう。
いわゆる「少額減価償却資産」の話です。使用可能年数1年未満のものは、当然に経費ですから、使用可能年数(耐用年数)2年以上のものとなりますが、次のとおりです。

(1) 取得価格10万円未満…全額経費になります。
(2) 取得価格30万円未満…中小企業かつ青色申告者が条件になりますが、一括償却することができます。1事業年度(1年)総額300万円が限度です。ただし、この制度は本年(平成20年)3月末で打ち切りになります。
なお、この制度を適用した場合にあっては、償却資産税(市町村税 = 1.4%)が課税されますので、どちらが有利か調べることが必要です。
(3) 取得価格20万円未満…3年の均等償却ができます。つまり3分の1づつ償却をしていき、3年後にはゼロとなるわけです。これには、償却資産税はかかりません。

10万円、20万円、30万円の判定は、1単位として取引される単位ごとに行います。例えば、応接セットとして購入すると「応接セット」全部が1単位です。テーブルを買い、別途椅子を買うとテーブル、椅子ごとに判定することになります。

また、消費税の課税業者は消費税ヌキの価格で判定します。

以上が一般的な処理です。少し面白い(見方によってはヘンテコかな?)ケースを考えてみましょう。
平成19年4月1日以降に取得した償却資産について、減価償却方法が大幅に変わりました。多くの中小企業が採用している「定率法」のケースです。
定率法による減価償却率が大きく変わり、250%償却法といわれる「定額法の償却率の250%」が新定率法の償却率になりました。

高級外車を例にとって、具体的に見てみます。

Q 耐用年数(6年)を終えている中古車を500万円で購入しました。当社の決算期は12月末、購入は3月でした。当社の償却は定率法によっています。当期の減価償却額を教えてください。

A お答えします。
中古の耐用年数は次によることとされています。
 (法定耐用年数 ー 経過年数)+(経過年数)× 20% = 中古品の耐用年数
   1年未満の端数は切り捨て、ただし、2年未満は2年とする。
これを当てはめるとご質問にある中古車の耐用年数は2年となります。

減価償却額は次のとおりとなります。
   500万円 ×(定額法・2年の償却率50% × 250%)× 10/12 = 520万円
   取得価格を上回っていますので、当然500万円全額(ただし1円の備忘価格を残す)がその期の経費になります。

不思議な現象ですねぇ?。もとより、中古の機械などでもこの現象はでるでしょう。
利用できることもあるでしょうが、某関与先の場合、1000万円を超える一括償却のケースが出ることがわかり、あわてて定額法に変更する手続きをとりました。そのままでは大赤字となり、かといって、償却額を減額して処理すると粉飾と取られて心外だからです。
いろんなケースで個別反応をして、企業を守りましょう!

やさしい税金・みじかな税金 アラカルト1

住宅ローン控除を受けている方はご注意を!

サラリーマンの方で住宅ローン控除を受けている方は、源泉徴収票を受け取ったとき、記されている源泉徴収税額を確認しましょう。
税額がゼロとなっている人は、「住宅借入金等特別税額控除申告書」を市区町村に提出すれば、住民税が安くなります。
これは、国税(所得税)から地方税(住民税)へ税源移譲が行われたためで、申告が条件です。どれくらい低くなるかは、個々によって違いますので一律的にいえませんが、住民税が安くなることはハッキリしています。
ただし、サラリーマンでも他の所得があり確定申告をする場合は、別紙の形で必要事項を記入して提出することになります。
モデルケースを示しておきましょう。

住宅ローン控除モデルケース