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日輪ヨシ子著「華のみち」ご案内

私どもとご交友いただいている日輪ヨシ子さんが卒寿を迎えて小さな文集「華のみち」を出版されることになり、私どもも全面協力で支援してまいりましたが、この程、堂々の完成・配本となりました。
90歳のおうなが、毎日をにこやかに、元気に活動され、エッセイまで書かれて若者にエールを送られるのは、もうそのことだけでも感動ものです。
一番最初の「生きていた金魚」をひとつ紹介しました。この一つにも、やさしさと厳しさのバランスがあり、さらには見事な優先順位が描かれています。90を超えて、なお生き生きとした行動の支えなのでしょうか。
それにしても見事な生き方です。
ぜひともお読みいただきたく、お申し込みをお待ちいたしています。

華のみち

日輪ヨシ子著
小さな文集「華のみち」
A6版 本文72頁 800円(〒210円)
お申し込み
FAX  075-525-0615

生きていた金魚

日輪ヨシ子

 趣味の会に出席の為、三泊四日で東京に行く事になった。留守番がないので植木と金魚で一寸心を痛めた。 

 植木はバケツに水を入れて側に置いておけば、気の付いた人がかけて下さるかも知れないが、金魚は家の中なのでそんなわけにはいかない。鉢も小さい。考えている中に当日になった。そして私は金魚を諦めた。

 水を替え、餌を与えて、「ご免ね。生きておれないかも知れないけれどご免ね」と言って家を出た。一寸胸が痛んだ。

  三十周年記念の大会で沢山の人と出会い、とても楽しく過して四日目、午後十一時に家に戻った。もう金魚は生きていないだろう、と思って、鍵を開け、金魚鉢を覗いた。

 「生きている」 私は思わず声を出した。生きていた。早速餌を一つまみまいた。別に弱っている様子もなく、いつものように餌を食べてくれた。見捨てた筈なのに。人間なら文句の一つも言う筈なのに、何の変わりもなく無心に泳ぎ廻っている。「ご免ねー」と言いながら、私の目から涙がこぼれた。

 三十余年、独り暮らしの私だけれど、今この金魚に慰められ、そして何かを教えられたような気がした。帰ってから一週間、お茶を飲みながら、その金魚を眺めている。

動くもの ありて楽しき金魚鉢
水替えやりぬ 餌まきやりぬ