活眼・心眼
8月5日から15日(注・1993年)、スウェーデン・アルイェプログで行われた「第3回連珠世界選手権大会」に日本選手団団長として参加した。「連珠」といってもピンと来ない人があるかもしれないが、「五目並べ」いえば納得される方も多いと思う。この連珠がRENJUとして、世界に浸透しつつあるといってもあながち誤りではない。事実、今大会に16カ国、150人ものファンが、人口3,800人の北極圏のすぐ近くの田舎町に集まったのである。
思えば16年前、万博会場跡で催された「建国60周年記念・ソ連邦展覧会」に来日していた一人のロシア人(ウラジミール・サプロノフさん)との出会いが、私に連珠の世界普及という途方もない夢を描かせることになった。たった1局の指導のあと彼はこう言った。
「連珠は石は動きませんが、ゲームは非常に厳しい。一つ間違ったら名人でもダメです。それに覚えやすい、すばらしいゲームです。ソ連でも、個人的に五目並べを楽しんでいる人はいます。でも組織をつくってしないと普及しません。モスクワに連珠クラブを設立して、連珠をひろめたいです。連珠は世界に通じるゲームです。」 これをきっかけに、京都とモスクワを結んだ指導対局(手紙による対局)が始まった。1局終わるのに早くて6カ月という気の長い対局である。ペレストロイカ以前のことだから、幾度か封書が行方不明になったり、開封されていると思われるものもあった。
このあとの動きは一切割愛するとして、今回16カ国が集まったのは壮観であり、感無量であった。
連珠が柔道と同じようにRENJUとして国際社会に認められる日も近い。
来夏、京都は建都1200年を迎える。これに呼応して「平安建都1200年記念 国際連珠大会in KYOTO」と銘うって、国際大会の企画をすすめている。早くも海外から20名のエントリーが届いているが、資金の乏しさを考えると嬉しいやら、心配やら?。
ところで表題の『活眼・心眼』
イヴ・スンドストロム女史 日本選手団団長として開会挨拶のあと大会名誉会長のイヴ・スンドストロム女史(自治郡評議会議長=日本での府県議会議長にあたるのだろう)に『活眼・心眼』を揮毫した色紙をプレゼントした。
お世辞にも上手といえない書であったが、スンドストロム女史にいたく気に入られて「どういう意味か」と尋ねられる。話せぬ英語で四苦八苦しながら説明すると、さらに気に入られ、詳しく書いて欲しいとの要望。
資料を持ちあわせなかったので、苦しみながら書きあげたのが次の解説。これを英訳してもらい、お渡ししてきたのである。皆さんに披露して、ご批判に耐えられるものであるかどうか。
「人はものの判断をする時、自分の目で見ます。
でも、目で見えるからといって正しいものとは限りません。また目に見えないからといって間違っているとも言えません。
自分の年齢、経験などによって自分の目(肉眼)以外の目で正しく判断する必要があります。これが“活眼”です。
さらに深く考えてみると自分自身の判断を超えたところで、いわば神のような心で見つめられる“心の目”が大切だと悟ります。勝ちたいとか、負けたくないではありません。
自然のままで正しい判断ができるようでありたいのです。これが“心眼”です。
日本の聖人のひとしく目標とするところです。
連珠の対局もいきつくところ、こうありたいと思うのです。」
税理士となって21年目、連珠の世界普及をめざして17年目。これからも活眼・心眼を大切にしながら活動していきたいと思う今日この頃である。