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私のKeyWord/驀直去

 この言葉を教わってからもう16年にもなるだろうか。90歳の老師、瀬尾謙一先生
からご教示いただいたが、今なお語り口調まで私の耳に残っている。

 「みんな悩むやろ。でもなあ、悩んだらあかんのとちがいまっせ。悩んだらいいんや。
悩みのない人生なんかありませんで。みんな悩んでいることに悩んでいるのとちがうか。
そんなことしたらあかん。

 よろしいか。大事なことは悩んだあとで決めたことに迷ったらあかん、ということを
忘れんようにしたらいいんや。

 悩むことはよろしい。そのあとでこうしようといったん決めたら、後は驀直(まくじき)
に行くこっちゃ。これがうまくいくための秘訣でっせ。」

 昭和60年10月、未来会計と取り組んだとき、瀬尾先生にタタミ大の「驀直去」を
揮毫いただきキーワードとし、以来、名刺の裏面には次のように記している。

 「驀直去 まくじきにされ、と読む。何ごとでも、計画中は大いに悩み、検討を加えるべし。
結論が出たとき、ためらわず、迷わず真っ直ぐに目的に向かっていけ、という意味を持つ。

 未来会計によって未来を考えましよう。大いに悩み、検討を加えることは極めて重要です。
私たちは、未来の夢を確実に手にしていただくためのアドバイザーであり、アシスタントを
務めます。

 目的が具体化したとき、「驀直去」を実行しようではありませんか。」

 私自身は、もともと職人的な技術にあこがれ、骨董品的税理士を目指したが、ひとつの
きっかけがあって180度の方向転換。未来志向、提案型会計をめざすようになり、今日に
いたっているが、未来志向に「驀直去」はまさにぴったりであると思っている。

 今、経済界はあまりにも閉塞(へいそく)感に満ちている。「中小企業は悪でしか生き
残れない」という著書が話題を呼んでいるそうだが、そんなことであってはいけない。
私はどんなに厳しく、辛くとも「それでも明るく、たくましく生きよう」を強く提唱して
いきたい。われわれ税理士を取り巻く中小企業はそうあってほしい。

 ややもすればくじけがちになることもあると思うが、これを支えてくれるのも、やはり
「驀直去」ではなかろうか。

ぎょうせい「税理」13年5月号