「連珠を世界に!」ロマンの旅 35
第5回連珠世界選手権アルイェプログ(スウェーデン)大会
名人戦10連覇など国内で無敵の中村茂名人は、世界戦でも第1回選手権8勝1分け、第2回選手権9勝2分けと無敵の存在だった。
この中村名人が欠場するとあって、進境著しい旧ソ連勢の勢いを止めることができるかが最大の話題。
この選手権は、日本で当時もてはやされたふるさと創生のスウェーデン版。アルイェプログ市、各種団体、商店街があげて誘致運動を展開して、1993.8.5?13に実現した。
アルイェプログは、連珠の世界発信地を目指すという大構想を掲げていた。当然のように地元紙は、競って大きな特集を組んで報道したものである。
まずは地元紙の取りあげ方をご覧いただこう。
* スウェーデン語は読めなくても、随所にRENJUが使われていることに注目いただきたい。
日本から離れたエストニアの新星、アンドゥ・メリティの世界選手権獲得は、世界各国に報告されインドにも速報されたくらいであった。
一方、わが国では、連日現地からマスコミ各社に速報を出し続けたが、優勝を逸したこともあり、わずかに京都新聞に小さく報道されるに留まった。
残念なことであったが、それにも増して、世界チャンピオンを奪われたことにほとんど反応を示さない選手・役員団に失望を禁じ得なかった。
第3回連珠世界選手権
アルイェプログ大会に集う皆様に! =開会に寄せられたメッセージから=
社団法人日本連珠社 総裁 田中龍夫
こよなく連珠を愛する皆さんに!
300年ほど前にわが国で生まれた連珠が、88年8月8日、貴国ストックホルムでRIFとして、ひとつの組織にまとまりました。それから5年、京都、モスクワを経て、アルイェプログの今大会に17ヵ国もの参加を得ているという報告を受け、その驚異の発展振りに驚き、頼もしく思っています。
これもRIFのトミー・マルテル会長のご尽力によるところ大でありますが、連珠の持つシンプル性、深奥性、ロジカル性に尽きない魅力があるからでしょう。
折りしも世界の各国とも諸問題をかかえているようでありますが、連珠のような平和なゲームによって、各国が相集い、相親しみ、さらに多くの国々に広がりをみせつつあると考えると、その効果は絶大なものであると確信するしだいであります。我々としても、アルイェプログ大会を機会にさらなる推進をお約束いたしますとともに、今大会を成功裏に導いて下さったアルイェプログ大会の関係者、とりわけシブ・スンドストルム女史(Mrs.SIV SUMDSTROM)に心からの感謝を申し上げます。
スンドストルム女史にわが国から7段の免許を謹呈し、大会の成功を記念いたします。
なお、来年8月、連珠発祥の地・京都では建都1200年を迎えます。RIF副会長であり、今大会の団長である早川嘉美が中心になって、1200年にふさわしい「国際連珠大会 in KYOTO」を催す企画を進めております。
世界の皆さんがひとりでも多く、来日くださるようお願いいたします。
1993.8.6
第3回連珠世界選手権
アルイェプログ大会 開会式での挨拶から
日本選手団団長 早川嘉美
日本選手団を代表して、一言ご挨拶いたします。
昨年5月、当地アルイェプログに日本人として一人でやってきました。その折、来年は多くの日本選手を連れてやってきます、とお約束しました。
お約束の人数には少し少ないですが、14名のメンバーでやってきました。よろしくお願いいたします。
最初におわびしなければならないことがあります。
それは、第1回選手権、第2回選手権のチャンピオン・中村茂名人を当地に連れてこられなかったことです。
我々としても中村名人を連れてこられなかったことは、非常に残念ではありますが、どうぞお許しいただきたいと存じます。
私の挨拶は、先に私どもの日本連珠社 田中龍夫総裁のメッセージをご披露申し上げましたので、割愛して個人的なご挨拶を申し上げます。
私がスウェーデンを訪れたのはヨンチョピングで、すでに11年も前のことです。今回でもう7回目になりました。
また、トミー・マルテル、ペーター・ヨンソン、イングラ・スンドリング、ヤン・パルムグレンさんら多くの方々を日本に、また京都にお迎えしています。
この信頼のキズナに強いものを感じるとともに、この信頼のキズナこそ、今日のような素晴らしい国際友好のマインドスポーツに発展したのだと誇りに思います。
日本とスウェーデンだけといわず、今日参加の国々はもとより、さらに多くの国々に連珠を通して友好の輪が広がっていくものを願うものです。
それにしても、今日の観光は楽しかったです。本当に多くの国々の仲間が混じって体いっぱい楽しんでいるのを見て、Renju is the language の意を強くして、本当に嬉しく思いました。
明日からいよいよ第3回連珠選手権ならびにB級トーナメントが始まります。
力いっぱい戦いましょう。力いっぱい戦ってください。
勝って喜び、負けて悔しがり、勝者を讃え、敗者を讃えようではありませんか。
それがよりグローバルな発展に寄与するものだと固く信じます。皆さんのご健闘をお祈りいたします。
最後に来年8月、RIF JAPAN のある京都、連珠発祥の地京都が建都1200年を迎えます。これを記念して、「国際連珠大会 IN 京都」を開催しますので、どうぞ多くのファンにお越しいただくようお願いして、ご挨拶といたします。
ありがとうございました。
(当日のスピーチ原稿が残されていましたので掲載しました)
第3回連珠世界選手権
アルイェプログ(スウェーデン)大会 現地からの速報
標記大会は北極圏のすぐ近くの人口3000人の田舎町で開催されました。地域上げての大歓迎で、連日各紙に大きく取り上げられる一方、テレビ取材や記念スタンプ(郵便切手の消印)まであり、スウェーデン版「ふるさと創生」の感がありました。現地から日本に向けて発信したFAX速報に一部手を加え掲載させていただこう。
(日本選手団団長 早川嘉美)
[アルイェプログより]
8月7日からスウェーデン・アルイェプログにおいて開催される第3回連珠世界選手権に出場する日本選手団は、元気に現地に着いた。
これに先立ち催された予選会(シード9名に予選勝ち上がり3名を加える)は、オーストリア、アゼルバイジャン、ウクライナ、エストニア、モルドバ、ウズベキスタン、ベラルーシ、フィリピン、フィンランド、台湾、フランス、ロシア、アルメニア、ラトビア、スウェーデンの15ヵ国で争われました。
その結果、アンドゥ・メリティ(エストニア)、アントス・スースロフ(同)、ニコライ・ミハイロフ(ウズベキスタン)が勝ち上がり、8日からの選手権に出場する。
日本から、長谷川一人九段、相楽俊八段、奈良秀樹八段が出場する。
[選手権始まる!]
第3回連珠世界選手権は、8日、スウェーデン・アルイェプログにおいて6日間の日程で開幕した。
第1回京都、第2回モスクワを制した中村茂名人が欠場。混戦が予想されるなか、相楽八段、奈良八段らがまず勝ち名乗りをあげた。長谷川九段は初戦に奈良八段との同士討ちで、手痛い1敗を喫した。
また、選手権と平行して行われているスウェーデンオープン大会は選手権入りを果たせなかった選手も含め62名が出場。日本から5名が出場しているが、早川嘉美八段らが2勝で1日目を終えた。
オープン大会は11日まで、8回戦で行われる。
[奈良八段 トップ]
第3回連珠選手権は2日目に入り、奈良八段が3連勝でトップに立った。
世界のトップレベルの棋力のアップは著しく、日本のトップ棋士に激しく迫っているが、出足2連勝の相楽八段が、スウェーデンのステファン・カールソンに苦杯してして全勝は奈良八段ひとりになった。
これを追うのは、エストニアの天才といわれるアンドゥ・メリティ(19)と長谷川九段、相楽八段ら5名。
15ヵ国が参加しているスウェーデンオープン大会は、イグラ・シニョフ(ロシア)ら2人が4戦全勝で、早川八段らが3勝1分けで続いている。
[奈良八段 敗れる]
第3回連珠世界選手権は3日目に入り、全勝の奈良八段がニコライ・ミハイロウ(ウズベキスタン)に敗れ、全勝がいなくなった。
トップは奈良八段の4勝1敗で、これをアントス・スースロフとメリティのエストニア勢が半星差で追っている。
相楽八段はアルディス・レイミス(ラトビア)に敗れ大きく後退し、長谷川九段は日本の2人に敗れ5分の星で低迷している。6回戦は奈良八段とメリティ、相良八段とスースロフの組み合わせで大きな山場。
また15ヵ国が参加して併催されているスウェーデンオープン大会は、シニョフ(ロシア)とツゥビケネ(エストニア)が5勝1分けで並び、日本勢では早川八段が4勝1敗1分けで5位につけている。
[奈良八段 依然トップ]
第3回連珠世界選手権は4日目に入り、奈良八段が6勝1敗でトップを続けている。
これを追うのは、長谷川九段と第2回大会で3位に食い込んだレイミス(ラトビア)、さらにメリティ、スースロフのエストニア勢が4.5ポイントで続いている。
8回戦は奈良八段ー相楽八段、長谷川九段ーレイミスが組まれており正念場を迎える。
スウェーデンオープン大会は、ディミテリィ・イリンが7勝1敗で逆転優勝。2位シニョフ、3位アレキサンドルフとロシア勢が上位を独占した。日本の最高位は三森政男九段の6位。前半健闘の早川八段は8位、石谷信一八段は14位、達富四段は44位、澤井敏郎五段は52位に終わった。
[大混戦 半星差に3人]
選手権は5日目に入り、奈良八段が6勝1敗1分けでトップを守っているが、メリティ(エストニア)とレイミス(ラトビア)が半星差で激しく迫ってきた。
10回戦、メリティに相楽八段があたり、最終戦で奈良八段ーレイミス戦があり、最後まで激しい優勝争いが続きそうだ。
なお、メリティは19歳。日本の第1人者中村名人をほうふつさせ、エストニアの天才と謳われている。またレイミスは第3回選手権で日本勢を押し退けて3位に入ったラトビアの期待の星。26歳。
[メリティ 逆転優勝]
スウェーデン・アルイェプログで催されていた第3回連珠世界選手権は、19歳アンドゥ・メリティさん(エストニア)が8勝2敗1分けで優勝した。
この大会で終始トップに立っていた奈良八段は最終局にレイミス(ラトビア)に敗れ、逆転を喫した。89年京都大会、91年モスクワ大会では、日本の第1人者中村茂名人が負けなし、通産17勝3分けで2連勝していたが、今大会は欠場したため、混戦が予想されていた。
日本のお家芸である{連珠」の世界普及の勢いは著しく、ヨーロッパではコンピューターによる棋譜の管理が著しく、実力面でも急迫が続いていた。
今大会も16ヵ国が参加。白熱の闘いの中、3期にして早くも日本は敗れ去ったことになる。優勝したアンドゥ・メリティさん(19歳、エストニア)は旧ソ連で天才少年と謳われ、早くから期待されていた。2年前に併催されたモスクワオープン大会で優勝している。15ヵ国17名で争われた予選を6勝1分けの圧勝で勝ち抜いている。
今年12月、首都タリンで初の国際大会が準備されており、若手を中心に大挙スウェーデンに押しかけ押し寄せ、エストニア旋風を巻き起こしていた。
なお、今大会はスウェーデン、旧ソ連勢に加え、フランス、オーストリア、フィンランド、フィリピン、台湾など16ヵ国が参加していた。また大会期間中には世界各国に向けて速報が打電され、インドの新聞にも取りあげられるなど大きな反響を呼んだ。今後一層、世界への普及に加速度が増すものと思われる。
次回開催国は、ミンスク(ベラルーシ)、バクー(アゼルバイジャン)、チューメン(ロシア)が立候補。来年8月の「平安建都1200年記念国際連珠大会 in KYOTO」の席上で催されるRIF会議で決定されることになった。
[団長より皆さまへ]
以上、日本の伝統室内ゲームRENJUの国際化は著しく、今後益々加速度を増すものと思われます。
今回チャンピオンが19歳であることを示すように、20代を中心としてすこぶる若手が対局の中心となっています。来年企画中の「平安建都1200年記念国際連珠大会 in KYOTO」には、早くも15名のエントリーがありました。
日本でしっかりした体制を作らなくてはなりません。各マスコミ皆さんの全面的なご支援を心からお願いいたします。
スウェーデン・アルイェプログにて記す
(1993.9.1『珠友』)
Mrs.SIV SUMDSTRM に色紙をプレゼント
(この模様は「活眼 心眼」をご覧下さい)
大会結果