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「連珠を世界に!」ロマンの旅 13

スウェーデン国際交流「100円基金」

連珠の国際普及は、すべて参加者の自己負担で賄ってきたが、これでは、将来を担う若者が参加できないし、次代にバトンをつないでいくこともできない。
こう考えた私は、「スウェーデン国際交流 100円基金」を考え、なんとか2年間で50万円を集め、若者を派遣しようと考えた。派遣争覇戦を行うことにより、PR効果も期待でき、一石二鳥と考えたのである。

早速実行に入った。1局ごとに100円の基金をお願いしようというものである。普通、この種の徴収はペナルティとして、負けた者から徴収するようである。だが、これではマイナス・エネルギーを集めて若者を派遣することになってしまう。勝った者が100円を負担する、プラス・エネルギーで若者に行ってもらいたかった。だから、勝者からの基金徴収でを提唱した。
はたして、2年間で50万円を集めることに成功した。

こうして行われたのが、スウェーデン派遣争覇戦である。参加8名はさびしかったが、3日間、8回戦という本格棋戦であった。
それと、参加者全員から「国際交流に思う」というテーマーでミニ論文の提出を求めた。国際交流の真の意義を願う私どもの強い意志でもあった。

京都新聞の報道記事と上位5名のミニ論文、末尾にこの棋戦へかけたリーダーの思いも掲載させていただこう。

京都新聞の報道から(1986.5.6)

西園四段が逆転V
連珠スウェーデン交流選手派遣
8月 2位の河村四段も参加へ

連珠の国際普及に力を入れている日本連珠社京都支部主催の「スウェーデン国際交流選手派遣争覇戦」が、3日から5日まで京都市左京区上高野上荒蒔町、民宿「なかむら荘」で開かれた。

日本の連珠は近年、世界に広まっている。その拠点になっているのがスウェーデン。同支部では早川嘉美八段らを中心に5年前から隔年ごとにスウェーデンへ選手を派遣、国際交流の成果を高めてきた。とくに今年は、若い人材を派遣しようと同支部では国際交流基金箱を設け、計画をすすめていた。

大会には8人が参加。全日本のシード第3位にランクされる長谷川一人六段ら強豪ばかり。一人8局打ちで争われ、決勝で顔を合わせたのは京都の会社員西園典生四段(29)と京都大4回生河村典彦四段(21)。ともに、成長著しいホープ。大激戦の末、逆転で西園四段が優勝、スウェーデン行きの栄冠を射止めた。西園四段が派遣選手に支給される50万円の半額を2位の選手にまわしたため、河村四段も参加が実現した。一行は早川八段を団長に8月4日にスウェーデンに出発する。

「趣味の連珠を通じ外国の人と交流できるなんて素晴らしいことです。もっと実力をつけて恥じない対局をしたい」と西園四段。河村四段も「日本の代表にふさわしいよう頑張ります」と、喜びを語っていた。

京都新聞

スウェーデン国際交流選手派遣争覇戦 出場者のミニ論文から

◆ 国際人としての日本人  西園典生(29)

近年、囲碁界では「世界アマ大会」「日中親善スーパー囲碁」等、各種の国際大会が開かれ、そのことにより日本国内の囲碁熱が、プロアマを問わず高くなってきていることも事実です。やはり日本固有のゲームとする訳でなく、他国でも同一のゲームを発展させることによって、そのゲーム自体が大きくなってゆき、面白くもなっていくようです。

また国際大会を開いて外国選手の考え方、ゲームに対する姿勢等日本人が学ぶべき点は多い(客観的なゲームへの考え方、勝負に対する執着心、及び結果に対する考え方等であろうか)。日本ではいろんなゲームに関しても「道」という考え方を導入しているが(そのこと自体は良いことなんだろうが)、その事がゲームの発展性を阻止している時があるように思えます。精神論を重視するあまり、ゲーム自体の楽しさが少なくなったり、過去を重んじるあまりルールの変更についていけなかったり…。理論的に正しいものに対しては素直に良いといえる勇気がほしいと思います。

ただ日本国内にいると「日本人的な考え方」が普通であり、当然であるので、そこから離れることはまず無理でしょう。そこで、1度外へ出てみるのです。そうすると、外国の人々の考え方等を直接感じることができ、また自分のものにもできると思います。その時点でもう1度自分に立ちかえって、どちらの考え方が良いのか、自分に合っているのかを考えてみる。それだけでその人の視野は既に拡がっています。特に、私を含めて、これからの若い人々には、その様な経験をどんどん積んでいってほしい。その事が彼(彼女)にどれだけ影響を与えるかは測り知れぬものがあるでしょう。ぜひそのようなチャンスをどんどん増やしていきたい。

最近、私自身も自分で視野の狭さを感じることが時々あります。だから外へ行く機会をさがしていたのです。それも私の大好きな「連珠」を媒体として、外国の国柄、人柄を見る事ができるならば、素晴らしい事だと思います。今回の「スウェーデン連珠大会」への日本選手派遣は3回目になりました。年々レベルの上がるスウェーデンの選手達を見るのが楽しみでもあり怖くもあります。ぜひ自分の目で見てみたいと思っています。

◆ スウェーデン国際交流に思う  河村典彦(21)

スウェーデン国際交流が実施されて今年で5年目になるという。私が京都連珠会に入会して実はまだ2年しかたっていない。前回の遠征のときはまだ入会したてで少し他人の目で見ていたように思う。しかし、月日がたつにつれて京都連珠会の仲間とも親しくなり、それにつれて国際的な視野も拡がっていった。その表れがソ連遠征であり、残念ながら実現はしなかったものの国際交流については京都が先進地であることが改めて認識できた。

多くの連珠家がたぶんそう思っていることだろうが、日本における連珠の普及はまだまだ遅れている。熱心な人々のおかげで少しずつ普及はされているが、なかなか大きな進歩が見られないのが現状だ。しかしこの国際交流は、大きな進歩をみせる可能性を秘めている。私達はまず種をまくことから始めなければならない。いつの日かにはきっと、大きな実となって収穫される日が来るであろう。
加えて私は現在21歳であり、これからの社会のおける国際的視野の重要性について少し述べてみたい。

このごろは海外へ旅行、あるいは留学をする人々が増えている。私のまわりにもそのような者はたくさんいる。その人達がどういう考えをもって日本を離れるかはわからないが、その人達を見ていると、目の輝きが違うのがわかる。特に出発の直前には活き活きとしているのがこちらにまで伝わってくる。私は時にはうらやましく思い、時には一緒になって喜んでみたりする。そのことを考えると、連珠を打ちながら国際交流ができるとしたら、どんなにすばらしいことだろう。その直前の嬉しさ、胸のときめきは想像できないほどにふくれあがっていることだろう。その気持ちはいくつになっても持ちつづけたいと思う。

◆ 連珠の普及について  長谷川一人(22)

京都連珠会を中心として進められている海外への連珠普及活動も、今年で5年目を迎えることになった。その間の地道な努力の成果として、スウェーデンからは3名の棋客を迎え、オランダでは日本連珠社のオランダ支部が作られるという動きがあった。

一方、日本国内での普及は、あまりはかばかしいとは言えない。これは五目並べというものがあまりにも知られ過ぎていて、このゲームが先手必勝だという結論だけが、あまりにも世間に流布しているからであろう。この結論を否定しようとはしないまでも、証明してみようという気を起こす人があれば、その人こそ連珠界へ足を踏み込んだ人であるといえる。このような人があまり出現しないのは、日本人が信じ込みやすい人種であるからであろうか? それとも人を見下したいと思う人種であるからであろうか?

ともあれ、現在のように日本での普及が遅れ、海外での普及が先行していけば、そのうちに日本でも普及するようになるだろう。なぜなら、そのような先例に女子柔道があるからである。かって日本では女子はおしとやかなものと決められ、柔道をすることなどは論外であった。ところが柔道も海外に普及するにつれて、男女平等の国において女子も柔道を始めるようになり、やがて女性だけのタイトルも競われるようになった。これであわてた日本柔道界が女子への普及も進め、現在では世界選手権が行われるに至っている。日本の連珠界も、海外に名人が誕生するようなことになれば、大あわてで普及に力を入れるようになるだろう。

女子柔道と同様の展開を望むならば、まずヨーロッパ選手権を開催できるようにする必要がある。そのためには今後もスウェーデン、ソビエト、オランダのみならず、他のヨーロッパ諸国へも連珠を普及する必要がある。幸い何らかの形で多くの国に五目並べは伝わっている(元々あったのかも知れない)ので、あとは我々の努力にかかっているといえる。

◆ 国際交流について  大井耕三(25)

ここ数年、連珠を通じて国際交流が盛んになってきたことは、連珠愛好家にとって大変喜ばしいことである。連珠を通じて、いろんな人たち、それも海外の人たちとふれあうことができ、また連珠の輪が世界に拡がっていくことは、連珠を愛している者の願いでもあろう。

現在、連珠を通じての国際交流は、スウェーデンをはじめ、ソ連、オランダ、デンマークなどの国々と行われている。私も以前、第1回連珠国別対抗戦に参加させていただき、郵便を通じてではあるがスウェーデン・ソ連の方々と交流できたことは大変うれしいことであった。最近では1年交替で日本からスウェーデンに出向く、あるいはその逆という形での交流がメインとして行われているが、将来は他の国々とも交流の場が持てるようになってほしい。また、現在では、京都連珠会、中でも国際交流の発展に情熱を注いでおられる早川先生や達富さんを中心にして交流の場が持たれているが、これからは、他の連珠会等からも交流の場がもたれるようになってほしいと思う。

私自身、まだ外国へは行ったことがなく、外国の生活や文化を肌で感じたことはない。人間は初めての人と出会うとある種の感動や感激を覚えるが、国際交流に参加すればその色はいっそう濃くなるものと思う。さらに、言葉や生活など文化の異なる人々との交流を深めることは、お互いの心に新鮮なものを感じとることができ、何かしら人間的に豊かになる、そのような気がする。私もぜひそういった国際交流に参加したいと思うとともに、将来は国際交流が発展して連珠世界選手権が実現されることを願っている。

◆ 連珠の交際交流と私  松井恒弘(34)

近年、日本は経済的に大きく発展し、世界に認められる「経済大国」となった。しかし、逆に、経済ばかりが先走り、個人としての国際的な交流には、少し立ち遅れているのではないだろうか。これは日本人のわりと保守的な性格が禍いしていると思う。

日本古来の伝統文化の中では、現在柔道が一番世界に広まっている。空手、生け花なども世界に支部を設立している。盤上ゲームの中にも囲碁では「世界アマ大会」など、国際試合が開かれるほどによく世界に普及されている。

ゲームとしての連珠の原型は、世界の各地に存在している。連珠を世界に広める下地はあるという事である。日本では五目並べの存在があまりにも大きく「禁手は、先手の優位さを防ぐためにある」といってもなかなか理解されない。これはやはり保守的な日本人の性格によるところが大きい。しかし、世界、特にヨーロッパやアメリカの人々は客観的にゲームをとらえることができるようだ。

世界に連珠が広まり、国際的な大会が何度も開かれるようになり、その度にルールをマスコミに発表されるようになれば、日本でも、もっと普及できるのではないだろうか。

私は残念ながら、今まで外国の方と連珠を打った事がない。これは田舎に住んでいる事もあるが、それ以上に、それを理由にしていた私自身のせいである。これからは、京都連珠会の会員にもなったことでもあるし、どしどし白星を提供しに京都まで来ますので、その内に連珠の国際交流にお役に立つ事ができると思っている。

主催者からのメッセージ

◆ 世界の友と石で語ろう  達富弘之(42)

連珠という我国の知的ゲームが世界に広がりつつある。楽しく、うれしいことである。海外ではソビエトとスウェーデンが抜きでている。我国の中堅棋士をおびやかすまでの実力をつけてきている。オランダをはじめとしてヨーロッパに各地にも広がっており、やがては肩を並べるに至ると思う。実際に彼らと会って感じることは、彼らは純粋に日本の技術と研究を評価し、学ぼうとしていることである。

京都連珠会ではスウェーデンとの交流をすすめている。他の国ともやりたいのだが、隣り町に行くような訳にも行かず、多額の経費を要するのが難題である。囲碁や将棋の世界の様な訳にはいかない。民間人の我々では財政的にも、日程的にも限度がある。とは言え、動き出した交流も5周年を迎えるとあっては後へ引く訳にはいかない。10周年を迎えるまでは先頭に立って取り組みをすすめたい。

私の希望は、国際的な視野を持つ若者の出現である。棋力だけではなく、立派な人格を身につけた人であることが望ましい。言葉は共通に理解できるものがあることが望ましいが、必ずしも語学が通じなくともよい。連珠そのものが言葉の代わりをします。私は自信を持って「連珠は言葉ですよ」と言いたい。石を通して対話ができる。これが連珠をはじめとするゲームの特徴である。私の経験から次の留意点を挙げておきたい。

 (1) 互いに相手を尊敬しあい、礼節を尽くしてもらいたい。
 (2) 棋力がどんなに違っても、決して手を抜いたり、相手を見下すことをせず、全力をあげて打ってほしい。
 (3) 特に、負けた時の態度は大切で、相手を称えるおおらかな気持ちを(くやしさは胸に秘めて)持ってもらいたい。

これらのことを忘れなければ、石を言葉として、世界の各地にすばらしい友達を得ることができるでしょう。
  Fine! Stone Language

◆ 国際交流選手派遣争覇戦の意義  早川嘉美(日本連珠社国際委員長 42)

スウェーデンとの国際交流にふみ出して5年を迎えることになった。4年前に印したちっぽけな第一歩が育って、5周年を迎えられるに至ったことは、この上ない喜びである。

そして、この記念すべき年に、次代を担う若手の有望選手を我々の手で派遣できることは、大変嬉しく、意義のあることである。今年の基金となった50万円は、我々が「出席ごとに1回100円基金」として集めた浄財である。その拠出者は、全国各地に広がっており、また年齢層も少年たちから80歳代までの各階層に渡っている。派遣選手に選ばれた方は、このような、私どもに寄せられている期待と暖かいまなざしを決して忘れないで欲しい。

できるならば、今回派遣選手に選ばれた喜びを、次の時代の方々にバトンタッチしていただきたいものである。そのことが、今回の派遣をさらに生きたものにしてくれるのだから…。

ところで、連珠は素晴らしい趣味であり、まったく身近で、心を開きあえる素敵な庶民文化である。世界のあちらこちらに根ざしている“五目並べ”(スウェーデンではルファチャック)を世界統一のルールにすることができれば、世界友好にはたす役割はあまりにも大きいといえる。私はこのデッカイ、果てしない夢を実現にむけるため、この交流を生涯続けていくことを自分自身に固く誓っている。

この活動の中心的な位置づけにおいて、国際交流選手派遣争覇戦が2年ごとに催されることを心から願わずにはいられない。
 「連珠を通して世界の方々と握手をしよう!」
の推進を誓って…

(1986.06)